東京地方裁判所 平成11年(ワ)8035号 判決
原告 A
被告 株式会社ビーバーズシステムインターナショナル
右代表者代表取締役 B
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、金一六九万六一二八円及びこれに対する平成一一年四月二八日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、原告が、被告主催の国際結婚お見合いツアーに参加し、フィリピン共和国において被告紹介の女性と知り合い、フィリピン共和国における教会において、同国の法律の手続に従って婚姻手続をしたが、三日後右女性は、突然家に帰ると言ってそのまま帰ってこなかったため、原告は一人で日本に帰国せざるを得なくなったが、被告としては日本において婚姻届を提出するまで面倒をみる義務を負っており、結局被告は右義務を果たさなかったものといえるから被告の債務不履行による損害賠償として原告が被告にこれまで支払った入会金、お見合いツアー料金、ウエディングドレス代、準備金、ビデオ撮影費用、生活費等合計一六九万六一二八円の損害を被ったとして、被告に対し、右金員と本件訴状送達の日の翌日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
一 争いのない事実
1 原告は、平成一〇年一〇月一二日から同年一〇月一五日まで被告主催の海外花嫁学院視察旅行のツアーに参加し、フィリピン共和国国籍のC(以下「C」という。)と知り合った。
2 原告は、平成一〇年一一月八日から同月一一日までフィリピン共和国のマニラ市に行き、マニラ市内の日本国総領事館において婚姻要件具備証明書等の申請をした。
3 原告とCは、平成一〇年一一月二六日マニラ市内の教会において結婚式を挙げたが、Cは頭が痛いとのことでホテルのベッドで休んだりしていたが、三日後の同月二八日の午前中に「家にちょっと帰ってくる」旨言って、そのまま戻ってこなかったことから、原告は一人で日本に帰国した。
二 主な争点
被告は、原告に対し、Cと原告を日本における法律上の婚姻手続を得る段階まで面倒をみる義務があるのにそれを怠った(債務不履行)といえるか否か。
(原告の主張)
被告は、Cがフィリピン共和国マニラ市内の教会において原告と結婚式を挙げた三日後に家に戻るといったきり戻ってこない状態に対し、その後何ら対応していないものであって、被告は、原告とCが日本の法律上婚姻手続を得る段階まで面倒をみる義務があるのに怠ったことは明らかであり、債務不履行である。
(被告の主張)
被告は、原告とCがフィリピン共和国においてお見合いをし、マニラ市内の教会において結婚式を挙げるため誠実に努力したものであり、その結果、フィリピン共和国法上の婚姻手続はなされた。原告とCはその後二日マニラ市内のホテルにおいて宿泊したが、その際具体的なことははっきりしないものの、Cはかぜをひいていて体調が悪かったが、結婚式を延期するわけにはいかないとして結婚式を挙げたが、体調が悪かったことから原告の希望どおりの夫婦生活に応じることができなかった。原告が、そのためか苛立って、ホテルの部屋で持ち物等に当たり散らしている姿を見て、Cは恐くなって家に帰ったものである。したがって、あくまでも原告とC間の私的な事情によるものであって、被告の債務不履行はない。なお、原告は、日本に帰国後の平成一〇年一一月三〇日、電話で被告に対し、Cとの結婚を破談にする旨の意思表示をなしたが、右原告の意思表示は、結婚後の一方的破談にあたり原告と被告との間で交わした国際結婚規約第七条に該当し、納入金は返還しないこととなっている。
第三争点に対する判断
一 前記第二、一の争いのない事実、証拠(甲2、3の1・2、6、9ないし11、乙1、2ない7の各1・2、8)及び被告代表者本人尋問の結果によれば次の事実が認められる。
(一) 原告は、平成一〇年一〇月一二日から同月一五日まで被告主催の海外花嫁学院視察旅行のツアーに参加し、Cと出会い、相互に婚姻する意思を持った。
(二) 原告は、平成一〇年一一月六日、被告の東京本社事務所において、被告との間で国際結婚規約(乙1)を取り交わした。
右国際結婚規約第一条は「当社は配偶者を真に積極的に求めている会員からなり、海外で情報収集を行い、広範囲な出会いにより、よりよい配偶者選択を援助するべく最新情報を提供する事を目的とし、海外にて出会いの設定から婚約、結婚式迄責任をもってお世話をする事業体である。」と規定している。
(三) 原告は、平成一〇年一一月八日から同月一一日まで、再度フィリピン共和国マニラ市内に赴き、マニラ市内の日本総領事館において婚姻要件具備証明書の交付を受け、マニラ市役所において結婚許可証の申請をし、マニラ市内の病院において原告とC双方は健康診断を受けた。健康診断の結果は、双方とも異常は認められなかった。また、原告はマニラ市内において、Cと婚約指輪を購入した。
(四) 原告は、平成一〇年一一月二五日から同月二八日までフィリピン共和国マニラ市ヘ三回目の渡航をし、同月二六日マニラ市内の教会においてCと結婚式を挙げ、フィリピン共和国の法律に基づいた婚姻届に原告とC共に署名をした。
(五) 同月二六日、原告とCはマニラ市内の教会において結婚式を挙げ、同市内のホテルに宿泊したが、三日目の朝、被告の代表取締役B(以下「菊池」という。)のマニラ市内の自宅にCの母から電話があり、Cが自宅へ戻ってきており、一緒に原告と宿泊しているホテルに行って欲しい旨言っているのが、どういうことか、との話であったので、菊池は、原告とCが宿泊していたホテルに向かった。原告は、菊池に対し「Cは病気持ちだ」との申立てがあり、菊池としては、Cとその母親の到着を待ったが、原告が乗る予定の飛行機の時間が迫っていたので、原告を菊池の運転する車に乗せて、マニラ空港に向かい、原告を見送った。
(六) 菊池が自宅に戻ると、Cと母親がいて、二人でホテルに向かったが渋滞に巻き込まれたため間に合わなかったことを菊池に詫びた。Cとその母親の話を総合すると、Cが、当日の朝実家へ帰った理由は、Cは結婚式の前日から風邪気味で熱があり、体調が優れなかったものの日本から結婚式を挙げるためにわざわざ来る原告のことを考えると、結婚式を延期することは出来なかったこと、体調が優れなかったため、原告の要望通りの夫婦生活に応じることが出来なかったこと、三日目の朝、原告が苛立った様子で、ホテル内のベッドの脇で鞄、衣類や持ち物に対して乱暴に当たり散らしていたので、Cは恐くなったためである。
(七) 原告が日本に帰国した日の翌日に、被告の相談員の原田は、原告の自宅に電話をして今後のことについて話し合ったが、原告は、「Cは頭痛持ちで喘息持ちだ」と繰り返すのみで話し合いにならなかった。
(八) 原告は、平成一〇年一一月三〇日、午後四時ころ、被告の相談員の原田に対し、電話をしてきて、「病気持ちの女性とは結婚できないので、Cとの結婚を破談にします」と伝えた。
二 前記認定の事実によれば、原告は、Cとフィリピン共和国の法律に則った婚姻手続を成しており、フィリピン法上は婚姻しているといえること、Cが実家に帰ったのは、体調が悪くて原告の要望どおりの夫婦生活に応じることができなかったが、原告がそのことを不満に思って苛立っている姿を見て恐くなってしまったからであること、健康診断の結果では、原告とCの健康上は、特に問題はなかったことが認められるのであって、被告の当時の対応に特段不都合があったとは言えず、債務不履行があったということは出来ない。
この点原告は、被告としては、原告とCが日本において婚姻手続をなすまで面倒をみる義務があるとするが、原告と被告との間で取り交わされた国際結婚規約(乙1)第一条によれば、前記認定のとおり被告としては、海外にて出会いを設定し、婚約、結婚式まで責任をもってお世話することまでの義務を負うにとどまるものであって、原告主張のように日本において婚姻手続をなすまで面倒をみる義務を負うものではないし、仮に、原告の主張のように日本において婚姻手続をなすまで面倒をみる義務があるとしても、本件においては、Cが実家に戻ってしまったのは前記認定のとおりであって、被告の支配の及ばない事情によるものであるから、被告に責めに帰すべき事情はないので、この点においても原告の主張は理由がない。
そうすると、原告の本訴請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がないことになるから主文のとおり判決する。
(裁判官 浦木厚利)